所有者不明土地にNPO法人ができること

NPO法人の活躍の場が広がる可能性|所有者不明土地特措法が成立

「所有者不明土地」

 

こう聞くと、耳慣れない言葉だなぁ・・と思うかもしれませんね。

 

これって実は、結構身近なものなのです。

 

皆さんのご近所にも、誰のものなのかわからない空き家や空き地ってありますよね?

 

単にご近所さんが知らないだけで持ち主はハッキリしていることもあれば、本当に所有者がわからないってこともあるんです。

 

登記簿を見ても長年相続登記がされていなかったり、されていても所有者に連絡がつかなかったり・・・

 

利用価値の高い土地がそのような状態だと、もったいないだけでなく、荒れ果ててしまった結果、周辺地域へ悪影響を与えてしまいます。

 

そんな土地が全国には、なんと410万ヘクタールもあると言われ、これは九州の面積を超えるほどです。(2018.6.23 中国新聞コラム)

 

九州全土を遊ばせたままにしておく・・・どれだけもったいないことかと分かっていただけたでしょうか。

ついに法律が成立!

ここにきて、ようやく国会が重い腰を上げ、平成30年6月6日に所有者不明土地特別措置法が成立しました。

 

第10条を見てみましょう。

 

(裁定申請)

第十条 地域福利増進事業を実施する者(以下「事業者」という。)は、当該事業を実施する区域(以下「事業区域」という。)内にある特定所有者不明土地を使用しようとするときは、当該特定所有者不明土地の所在地を管轄する都道府県知事に対し、次に掲げる権利(以下「土地使用権等」という。)の取得についての裁定を申請することができる。

 

一 当該特定所有者不明土地の使用権(以下「土地使用権」という。)

 

二 当該特定所有者不明土地にある所有者不明物件(相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない物件をいう。第三項第二号において同じ。)の所有権(次項第七号において「物件所有権」という。)又はその使用権(同項第八号において「物件使用権」という。)

 

「地域福利増進事業」を実施する者は、土地利用権の申請をすることができるとありますね。

 

地域福利増進事業とは、まず、第2条3項に列挙された10の事業に該当するものだとされます。

 

10の事業とは

10の事業は以下のとおりです。

 

一 道路法による道路、駐車場法による路外駐車場その他一般交通の用に供する施設の整備に関する事業

二 学校教育法による学校又はこれに準ずるその他の教育のための施設の整備に関する事業
三 社会教育法による公民館又は図書館法による図書館の整備に関する事業
四 社会福祉法による社会福祉事業の用に供する施設の整備に関する事業
五 病院、療養所、診療所又は助産所の整備に関する事業
六 公園、緑地、広場又は運動場の整備に関する事業
七 住宅(被災者の居住の用に供するものに限る。)の整備に関する事業であって、災害(発生した日から起算して三年を経過していないものに限る。次号イにおいて同じ。)に際し災害救助法が適用された同法第二条に規定する市町村の区域内において行われるもの
八 購買施設、教養文化施設その他の施設で地域住民その他の者の共同の福祉又は利便の増進に資するものとして政令で定めるものの整備に関する事業であって、次に掲げる区域内において行われるもの
イ災害に際し災害救助法が適用された同法第二条に規定する市町村の区域
ロその周辺の地域において当該施設と同種の施設が著しく不足している区域
九 前各号に掲げる事業のほか、土地収用法第三条各号に掲げるもののうち地域住民その他の者の共同の福祉又は利便の増進に資するものとして政令で定めるものの整備に関する事業
十 前各号に掲げる事業のために欠くことができない通路、材料置場その他の施設の整備に関する事業

 

個人的見解ですが、1号の路外駐車場への活用は、実施のためのコストが比較的少なそうで、かつ原状回復も簡単そうです。

 

近所迷惑な荒れ地がコインパーキングになったら、便利で嬉しいですよね。

 

みんなの利益を目的に

ただし、これら10の事業に該当するなら何でも良いわけではありません。

 

法によると、「地域住民その他の者の共同の福祉又は利便」の増進を図るために行われる事業でなければなりません。

 

この解釈はまだはっきりしていませんが、荒れ地の近所のAさんのために家を建ててAさんに住んでもらう・・・といった利用だと、Aさんばっかり利益を受けているので、共同の福祉とは言い難いでしょう。

 

また、株式会社は利益を特定の株主に配当するので、これら10の事業を実施したとしても、共同の福祉または利便の増進が目的であることを示すのが難しそうですね・・・

 

この点、NPO法人は特定非営利活動すなわち不特定多数の利益(公益)の増進に寄与することを目的とする活動を行うので、地域福利増進事業とは親和性がとても高いと考えられます。

 

都道府県知事の裁定も、NPO法人であれば下りやすくなるのではないでしょうか?

 

この法律は成立したばかりで、まだまだ詳細は分かりませんが、NPO法人にとっては社会に貢献しつつ事業用の土地を確保できるチャンスになると考えられます。

 

皆さんのNPO法人(あるいは設立予定のNPO法人)で、所有者不明土地を活かすアイディアがあれば、来年の施行までしっかり温めておきましょう!

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