大半のNPO法人は寄附を活かせていない!
NPO法人の財源と言ったら、どうしても助成金や補助金を連想しがちではありますが、同じくらい重要な要素が「寄附」です。
なぜ寄附が財源として重要かと言うと、非常に安定しているからです。
特に補助金は条件を満たしているからと言って必ず支給されるものではなく、また、一度支給されたとしても再度支給される保証はなく、長期間あてにすることはできません。
一方、寄附は賛同者がいる間継続して受け取ることができます。
NPO法人の活動を安定して継続していくためにも、もっと寄附を受けることが重要です。
さてここで、内閣府が行った調査結果(平成29年度 特定非営利活動法人の実態調査報告書)を見てみましょう。
一年間でNPO法人が個人から寄附を受けた件数を集計して、平均をとってみると・・・95.4件です。
「なんだ、結構多いのだな」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これが平均という数字の恐ろしいところです。
ごく一部のNPO法人が寄附を大量に集めたら、平均は想像以上に大きくなってしまうのです。
ここで、より具体的なデータを見ると、寄附がいかに少ないかが見えてきます。
調査によると、個人からの寄附件数が年間0件であったNPO法人は、なんと全体の47.5%です!
1件であった法人は8.1%で、これらだけでNPO法人の過半数を占めてしまっています。
なぜ寄附件数は少ないのか?
なぜ、こんなにも寄附件数は少ないのでしょうか?
・・・実は、明確な答えが調査に表れていました。
内閣府調査によると、NPO法人全体の52.1%が・・・
寄附に対して特に何の取り組みも行っていないのです!
何もしなくて寄附が集まらないのは、当然の傾向と言えるでしょう。
寄附を集めるためには、まずは寄附のための取り組みを始める必要があります。
何をすればいいのか?
では、寄附のために何に取り組めばいいのでしょうか?
参考になる非常に頼もしい法人があります。
それが、「認定NPO法人」です。
認定NPO法人は、寄附制度を活かすことに特化した法人です。
年間の個人寄附件数が平均値でで352.1、中央値で78.5と非常に優れた数値を出しており、まさに寄附集めのエリート集団と言えるでしょう。
彼らが行っている募集活動を見ることが、効率よく寄附を集めるための近道と言えそうです。
それでは、認定NPO法人が実施している寄附募集活動の実施率トップ5を見てみましょう。
(実施率26.9%)
ホームページを持っているNPO法人なら、すぐにでも実行できるコストパフォーマンスのいい方法ですね。
対面で出会った人にHPを見てもらえば、効果的にアピールすることができます。
名刺にホームページへの案内を記載すると、興味を持った人は見てくれるはずです。
(実施率34.6%)
5位とも関連しますが、フェイスブックなどのSNSを活用したアピールが第4位です。
こまめに寄附を促す投稿をしていれば、それを目にする人も確実に増えていきます。
人と会ったときは、各種SNSを利用しているかを確認して、積極的に繋がっておくのがいいですね。
また、寄附を促すだけでなく、イベントの告知などにも利用できます。
この方法もほぼ無料で利用することができ、おすすめです。
(実施率45.2%)
なんと広告の掲載が、ほぼ無料のSNSを抑えて3位です。驚きですね。
ただ、広告出稿料が出せない法人さんも多いと思います。
しかし、非営利団体向けに広告料の支援を行っているところもあるのです。
例えば、Googleの広告は、NPO法人に対して毎月10,000ドルの広告費を支援するプログラムを行っています。
すごい額ですね・・・ 10,000ドルもクリックさせるほうが大変そうです。
このような支援を利用することで、法人の負担を抑えつつ寄附を呼び込むことができるので、非常に有益です。
「お金がかかるから・・・」と忌避してしまいがちですが、寄附集めのエリート達はバンバン活用しています。
各種支援も利用することも含めて、ぜひ検討してみて欲しい方法です。
(実施率50.6%)
突然、事務的で地味な作業がランクイン。
こんなことして、寄附が増えるの・・・? と思われるかもしれませんね。
しかし、これが本当に重要です。
この作業が、寄附を「継続」させるために必要なのです。
もし、自分が自腹を切って寄付をした法人が、その寄付金を何に使ったのか報告もしないで、使途を把握もしていなかったとしたらどうでしょうか?
来年も寄付をするかどうか・・・考えてしまいますよね?
一方、活動報告が上がり、「支出のうちあなたの寄附はここに充てました、あなたのおかげで去年の事業は成功しました!」と言われたら、やっぱり嬉しいですよね。
来年も寄付をしようと前向きになると思います。
大変で地味な作業ですが、どうせNPO法人である以上、毎年の事業報告書の作成は義務です。
それならば、その報告書を少し手直しして、寄附提供者向けの文書も作ってみて、彼らに御礼のメッセージを出してはいかがでしょうか。
そして、注目の第1位は・・・
(実施率53.3%)
なんだかんだ言って対面アピールは強かった!
堂々の一位です。
私も経験があるのですが、目の前の人にアピールされて、寄附をお願いされたらなかなか断りづらいのです(笑)。
ましてや、NPO活動だと公益性も高いのでますます断れません。
みなさんも各種イベントを開催されると思いますが、その際にぜひとも活動に対する寄附をお願いしましょう。
そして、寄附をもらったら活動報告を忘れずに!
できることから始めましょう
いかがでしたか? 気になった方法はありましたか?
いきなり全てを実践するのは難しいと思いますが、やはり寄附を妨げているのは「特に取り組んでいることはない」という状態です。
SNSの活用などはすぐにでも始めることができます。
まずは行動してみてはいかがでしょうか?
関連ページ
- まずは10人集めよう
- NPO法人を設立するには最低でも社員が10名必要です。現在活動しているメンバーが10人未満であるなら、同志を増やす必要があります。
- 共益性が高いとダメ!?
- NPO法人の活動に関して重要となる公益性と共益性。似ているようで全く違う、2つの言葉の違いとは。
- 特定非営利活動と収益事業
- 特定非営利活動に係る事業と、税法上の収益事業は特に混乱しがちなところです。
- NPO向けIT助成プログラム
- Techsoup等が実施しているNPO向けの助成プログラムがあります。通常であれば高価なソフトウェアを利用するチャンスですので、是非活用したいですね。
- Google for Nonprofitsとは
- ぱっと見ただけではわかりにくいGoogle for Nonprofitsの概要を見てみます。
- Google Ad Grantsのすすめ
- 月間最大1万ドルのウェブ広告助成プログラム・Google Ad Grantsの気になるところをバッサリ解説していきます。
- 休眠預金の活用について
- ついに2009年から10年経過して、休眠預金が発生し始めました。今後公益活動に使われるであろう休眠預金の行方を注視します。
- 学校の一部授業をNPO等が受け入れる流れ
- 2018.10.1 文部科学省が小中学校の総合学習時間を校外のNPO等に受け入れてもらい、教員の引率が不要となる案を出したことに関して考察してみます。
- 所有者不明土地にNPO法人ができること
- 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法が成立しました。この法律でNPO法人ができることについて考えてみます。
- NPO法人の解散と借金
- NPO法人を始めることばかりでなく、もし終わる時が来たら・・・。普段は考えないことですが、それでも全く考えない訳にはいかないことです。
- 休眠NPO法人調査について
- 内閣府が平成31年4月16日にまとめた休眠状態にあるNPO法人に関する調査結果から、どのようなNPO法人がマークされているのかを見てみます。