休眠預金の活用について

休眠預金の活用について

休眠預金の活用について

 

休眠預金とは、ざっくり言うと「銀行口座等に10年以上放置されている預金」です。
引っ越しの際に押し入れの奥から古い通帳が出てきた経験が皆さんにもあるのではないでしょうか。
この休眠預金が毎年700億円も新たに発生し続けていると言われています。
(休眠預金等交付金に係る資金の活用に関する基本方針より)

 

この休眠預金は「休眠預金等活用法」によって『民間公益活動』に活用されることになりました。
では、この『民間公益活動』とは何でしょうか?
基本方針によると、次の3つの要件を満たす活動とされています。

 

@ 社会の諸課題の解決を図ることを目的とする活動

A 民間の団体が行う活動で、「子ども及び若者」「日常生活又は社会生活を営む上での困難を有する者」「地域社会における活力の低下その他の社会的に困難な状況に直面している地域」を支援する活動
B 成果を収めることにより国民一般の利益の一層の増進に資することとなるもの

 

@ 社会の諸課題の解決を図ることを目的とする活動について

第一の要件ですが、そもそも社会の諸課題とは何でしょうか?
基本指針は「国及び地方公共団体が対応することが困難な社会の諸課題」としています。
また、このような記述もあります。

 

これまで既存制度において対象とされてこなかった人々が抱える課題に焦点を当て、前例のない取組や公的制度のいわゆる「狭間」に位置するような取組、社会の諸課題と一般に認識されていないために対応が遅れている分野を中心に、共助の活動に焦点を当てた支援に活用する。

 

この『狭間』という言葉は基本指針に度々登場する言葉で、かなり重視されていることがわかります。
今まで行政が対応できていなかった所に支援を新規に拡大していきたいという意図を感じます。

 

「なるほど、じゃあ例えば『子ども・子育て支援法』等の子ども支援の法律はすでにあるから、子どもは休眠預金活用の対象外か」
と思いきや、Aの要件で覆ります。

 

A民間の団体が行う活動で、「子ども及び若者」「日常生活又は社会生活を営む上での困難を有する者」「地域社会における活力の低下その他の社会的に困難な状況に直面している地域」を支援する活動

むしろ子どもは名指しで指定された対象になります。
つまり「子どもに関する現行の支援ではフォローしきれていない狭間」ということでしょうか。
こう考えると、民間公益活動とはどの活動をいうのかという具体的判断基準を考えるだけでも大変そうですが、少なくともこれら3つの対象のいずれかを支援している活動(方針では「公益に資する活動」)をすることが休眠預金等活用法の対象となるための条件になっているようです。

 

B 成果を収めることにより国民一般の利益の一層の増進に資することとなるもの

ここで注目すべきは前半の記述「成果を収めることにより」です。
今回の指針では、公益活動の成果を目に見える形で生み出すことに重点が置かれ、そのために「社会的インパクト評価」をしなければならないとしています。
ここで社会的インパクト評価の話を始めると非常に複雑になるのでそれはまた別の機会にするとして、重要なのは「成果の指標は定量的指標を基本とする」とされていることです。
公益活動は一般的に定量的な評価を用いるより、定性的な評価を用いることが多いです。
例えば、高齢者を対象にレクレーションをする団体が活動の報告をしたと想定すると・・・「本日はボランティアのみなさんと老人ホームを訪問して高齢者の方々と折り紙をして楽しみ、大変ご好評をいただきました」といった表現が多いですが、これを定性的評価にしてみると・・・
「本日は4名のボランティアが老人ホームの高齢者20人を対象に2時間の折り紙レクレーションを実施したところ、「気分が良い」と回答した高齢者の割合が55%増加しました」
こんな感じになると思われます。
公益活動の中でも定量的な評価のしやすさには違いがあるので、定量的な評価をしやすい活動が分かりやすい成果を上げて、そうではない団体があたかも成果を上げていないように見えてしまうことがあるのでは・・・?と、少し心配してしまいますね。
基本指針は、「評価対象によっては、定性的指標と定量的指標との併用等、定量的な尺度に偏りすぎることのないように留意する必要がある。」と言っていますが、この辺りのバランスをどうするのかは注視していきたいところです。

 

今後の流れ

 

今年の1月11日に「指定活用団体」に「一般財団法人日本民間公益活動連携機構」が指定されました。
この指定活用団体が、今後の資金分配を監督していくことになります。
スケジュールによると、2月頃までには、「基本計画」が打ち出され、それによって「民間公益活動を行う団体」の選定基準が定められます。
この「民間公益活動を行う団体」は多岐にわたる法人の中から選定され、営利団体である株式会社ですら除外されていません。
とはいえ、公益活動といえばやはりNPO法人ですし、多くのNPO法人が将来的に「民間公益活動を行う団体」として選定され、助成を受けることになるはずです。
今後の動向を注視していきたいと思います。

(2019/02/28追記)
第17回休眠預金等活用審議会が平成31年2月19日に開催され、休眠預金等交付金に係る審議がなされたようです。
ざっと資料に目を通し、気になった記述をピックアップしてみましょう・・・

 

2019年度休眠預金等交付金の額は、40億円以下

 

運用初年度は40億以下ということになるようですが、基本方針では年間700億円とされていた額との乖離がありますね。
初年度ということで様子見の意味合いが強いのでしょうか? あるいは、銀行から資金が出てくる見通しが立たないのでしょうか?
運用側や銀行も一枚岩ではないでしょうから、色々と擦った揉んだがあったのではないかと推察される数字ですね。

 

2019年度において 本制度の下で指定活用団体が行う資金提供は、資金分配団体への助成のみ

法的には、指定活用団体は民間公益活動を行う団体にも資金提供ができるはずですが、今年は見送るようですね。
本年度NPO法人等が資金提供を受けるのは、近々選定される資金分配団体からのみとなるようです。

 

本年秋には資金分配団体に対する助成等関係業務を開始

ということは、NPO法人等の民間公益活動を行う団体に資金提供が行き届くのは、本年秋よりさらに後ということになりますね。

 

休眠預金等に係る資金に依存した団体を生まないための仕組みが組み込まれていること等に十分

この記述は他の関連書類にもかなり頻繁に登場していますね。よほど資金依存させたくないのでしょう。
儲かる仕組みづくりができることををアピールするのが好印象ということでしょうか?

 

3月13日に再び審議会が開催されるようですので、こちらも注目ですね。

 

(2019/04/17追記)

 

3月に行われた審議会の内容をざっと見てみましょう。

 

全国各地で地域に根ざして従来から事業を展開しているNPO等に対する支援として「草の根活動支援事業」を定義し、10億円の助成総額を目途としています。
民間公益活動実行団体には最大2千万円を目安として助成金を支給するとされていますので、単純計算で少なくとも50以上の団体が助成を受けることができます。(実際はもっと多くの団体になるはずです)

 

今回の審議会では社会的インパクト評価が話題に上がっていました。
これは休眠預金等活用のすべての事業で実行することが強調されました。
そして、そのアウトカム(成果)評価方法が定まらない、わからないことについて議論されていました。
評価指針は6月末までに策定されるようですが、これを隅から隅まで把握して計画に盛り込んでおけば、将来、採択検討の際に有利になるかもしれないですね。

 

また、休眠預金等に係る資金に依存した団体を生まないための仕組みとして、事業費の20%以上は自己資金又は民間からの資金を確保させることを原則とするようです。
休眠預金に依存させないというのは以前から繰り返し強調されていましたが、具体的な指針の一つが出てきましたね。

 

また、管理費に関する設定として、助成額の最大15%を管理的経費にあてる事ができるとされています。
これは過去の先例にならって割合が決められたようですので、ひょっとすると運用が進むにつれて現実に則した割合に変わるのかもしれませんね。

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